クラウドファンディングは「いいアイデア=成功」ではありません。実際には、企画の設計段階で成否が9割決まると言っても過言ではないほど、“構造”と“戦略”が重要です。
今回はCAMPFIRE公式パートナーとして200件以上のクラファンを伴走してきた実績から「支援が集まるプロジェクト設計」の本質を、実例を交えて解説します。
企画設計とは何か?
クラファンの「企画設計」とは、主に以下の要素を整えることを指します。
1. 誰に向けての企画か(ターゲット)
2. どんな課題を解決するのか(共感)
3. その手段としてクラファンを選んだ理由(納得)
4. 支援することで得られる価値(リターン)
5. 目標金額と達成プロセスの整合性(戦略)
支援が集まる企画の3大要素
“共感”が湧くストーリー設計 クラファンで支援が集まるプロジェクトには、「なぜそれをやるのか?」という強い動機と背景があります。
▼成功事例: カフェ開業プロジェクト
・起案者は元介護士で、日々孤独を感じる高齢者との会話の中から「地域の誰もが気軽に立ち寄れる場所の必要性」に気づいた。
・クラファンページでは、介護現場での実体験エピソードを織り交ぜ、起案者自身の原体験が共感を呼んだ。
・店内には子連れでも安心して過ごせるスペースや、高齢者向けメニューも用意されるなど、実際の店舗設計にも“想い”が反映されていた。
・支援者の8割が女性で、「自分の家族や地域にこんな場所が欲しい」との声が多く集まった。
→ ポイント:「自分ごと化」される背景を語ることが共感を呼びます。
ターゲットが明確でニーズに合っている 万人向けにせず、「誰のためのプロジェクトか?」を絞るほど支援は集まりやすくなります。
▼成功事例: 地域限定クラフトビールの販売プロジェクト
・起案者は地元の小さなブルワリーで、観光客減少により販路を失った状況からの起死回生策としてクラファンを選択。
・対象は主に地元住民とふるさと納税ユーザーに設定し、県外の同郷出身者にも響くようなPR文を作成。
・商品名には地元の方言を入れ、ラベルデザインも地域の風景をあしらうなど、強い“地元らしさ”を演出。
・リターンには「1年分定期配送プラン」や「限定ビールネーミング権」など、地域愛を刺激する工夫も多数あった。
→ ポイント:クラファンでは「誰の応援を集めるのか?」を先に決めておくことが重要
支援しやすい“設計”になっている
- リターン価格帯のバランス
- スマホでも読みやすいページ構成
- SNSで拡散されやすい言葉やビジュアル
▼成功事例: 子ども食堂を増やすプロジェクト
・起案者はNPO団体の代表で、地域の子どもたちの“孤食”問題に長年取り組んできた人物。
・1,000円、3,000円、10,000円のリターンは「おにぎり一食分支援」「食材セット支援」「1か月分の運営資金支援」と明確に役割を提示。
・全体で6種に絞り、応援のしやすさを重視。
・サムネイル画像には子どもたちが笑顔で食事を囲む姿とともに、「1日1食の安心を届けたい」というコピーを掲載し、SNSでも大きな反響を得た。
・メディアにも取り上げられたことで、後半には法人支援も増加。
→ ポイント:支援のハードルを下げ、「思わず応援したくなる設計」ができているか?
起案前に確認したい“5つの設計チェックリスト”
1. ターゲット:誰の共感を得たいのか明確になっているか?
2. ストーリー:感情が動くストーリーや背景があるか?
3. リターン:応援しやすい価格設計になっているか?
4. ビジュアル:プロジェクトの魅力が一目で伝わる画像があるか?
5. ゴール設計:集まった支援金の使い道が納得できるか?
よくある“支援が集まらない”企画のNG例
1. 「面白そうだけど、なぜクラファンなのか分からない」
2. 「起案者の想いが薄くて他人事に感じる」
3. 「リターンが高額すぎて応援しづらい」
4. 「情報が多すぎて読みづらい」
→ これらはすべて“設計ミス”です。特に、起案者本人の顔や感情が見えない企画は失敗しやすい傾向にあります。
まとめ:企画設計=支援者目線の「共感設計」
クラファンで支援が集まるかどうかは、スタート前にほぼ決まっています。どれだけ素晴らしい商品やアイデアでも、「誰に、どんな想いで、どう届けるか」が整理されていないと、支援は集まりません。
企画段階から支援者の気持ちになって考える。 「もし自分が支援する立場だったら、この企画を応援したくなるか?」
これを自問しながら、丁寧に企画設計を行いましょう。